「伊勢宗瑞」(いせそうずい、後世に「北条早雲」と呼ばれる戦国武将の魁)の少年期を描く「新九郎、奔る!」(ゆうきまさみ・作、週刊ビッグコミックスピリッツ連載中)の単行本第7集が、好評発売中!
京と荏原を忙しく往来する、いや、せざるを得ない立場に追い込まれる新九郎。
京で猛威を奮う感染症!、荏原では小田川決壊!など、現代に重なるシーンがさりげなく描かれて・・・・
タグ: 北条早雲
荏原郷は難題山積!
「新九郎、奔る!」(ゆうきまさみ・作、週刊ビッグコミックスピリッツ連載中)の単行本第6集が先日発刊されました。
力尽くで領地境界を決しようとする那須家と西荏原伊勢家。新九郎は、何とか武力衝突を回避しようと奔走する。そこで目を付けたのは、伊勢家の菩提寺・法泉寺に残る書き付けの数々・・・。
第3集から展開される「荏原編」の中で描かれる伊勢新九郎盛時は、下剋上の梟雄とはほど遠い、政治力に長けた知性派武将の片鱗が見てとれます。
単行本第6集の裏表紙、机に向かい筆を執る姿が採用されています。ここで書いている禁制(きんぜい)が、西江原町の法泉寺に現存する古文書。そして、この「禁制」が早雲の備中伊勢氏出自説を裏付ける歴史資料と言われています。ただし、禁制が発給された背景や経緯は不明、そこのところは作者の創作です。つーか、そもそも早雲の前半生そのものが不明ですね。
備中の片田舎で新九郎が四苦八苦している頃、関東は古河と堀越の二つの足利家に関東管領、守護大名などが入り乱れた権力構造の混乱が続いている。
荏原編
「新九郎、奔る!」(ゆうきまさみ・作、週刊ビッグコミックスピリッツ連載中)の単行本第4集が、小学館より好評発売中!
いや、もう、モロ、井原市の中世史ですよ、これ!
政権を二分する応仁の乱が、代理戦争の様相で地方に波及していく中、備後にも飛び火する。隣接する備中の荏原も、領主不在のままではまずいと、領主の父に代わって新九郎が荏原に入る。田舎の小さな領地を、治めるどころか窮地の連続。
田舎の領地経営を経験することによって、後に関東一帯を治める政治力を身につけていく流れか?・・・これは、「早雲」の生い立ちについて、現存するわずかな史料の間隙を紡ぐ、全く新しい解釈と言っていいかもしれない。
それにしても、リアルな地名が出てくること!
中世の井原市史、か!?
北条早雲の少年期を描く「新九郎、奔る!」(ゆうきまさみ・作、週刊ビッグコミックスピリッツ連載中)が、中世の井原市を舞台に繰り広げられています。
室町時代末期の荏原荘は、東西の荏原郷における統治権をめぐって複雑な力関係がうごめいている。
そこに、かつて荏原荘全域を支配していた那須一族が絡んでくる。この頃の那須氏は荏原荘の北部を領有している、という設定。
高越城から、西荏原(当時はこう記していた)の法泉寺へ向かう道すがら野球場と言えば、興譲館高校が山の中に所有する「原田球場」、地元民にしかわからん「ゆうきギャグ」も楽しい。
源平屋島の合戦「扇の的」も挿話として描かれている。独特の「ゆうきまさみ」タッチで。
備中ネタで、雪舟へのオマージュと見られるシーンも描かれていたり、西荏原の戸倉や小菅城、草壁荘(矢掛町)の猿掛城など、この地方お馴染みの地名も出てきます。
因みに那須氏の拠点・小菅城は、葡萄浪漫館のすぐ近く。葡萄浪漫館のあるこの場所には、那須一族の供養塔がありました。→もう少し詳しく
北条早雲の少年期
を描く、「新九郎、奔る!」(ゆうきまさみ・作)が、面白い!
素性の知れない風来坊から成り上がって、関東の覇権を盗った戦国武将の先駆けと言われていた北条早雲。様々な出自説がある中、近年の研究で備中荏原を所領とする伊勢氏の出身が最も有力となっている。享年に関しては長らく88歳といわれていたが、これも64歳だったとほぼ特定されているようだ。
単行本は3巻出ていて、現在週刊ビッグコックスピリッツに「荏原編」連載中。永井豪の「北条早雲」は88歳説で描かれている。
少年期が謎に包まれていることも確かで、そこには作家の創作の余地が豊富にあろうというもの。
荏原郷高越城下で成長する少年期が描かれた作品に、伊東潤「黎明に起つ」、南原幹雄「謀将北条早雲」、富樫倫太郎「北条早雲」などがある。小田川の魚取りや笠岡のおしぐらんご参戦、村の娘達を拐かした野党の一団を成敗、法泉寺で熱心に学問に励むなど、荏原荘の風景の中で様々なエピソードが展開されている。いずれも、備中荏原荘でたくましく幼少期を過ごし、やがて京へ上って行くというもの。
「新九郎、奔る!」はそこがちょっと違う。それ故、これから始まる「荏原編」が気になる。